今日、良質のプロフェッショナルなギターに出会うことは本当に難しい。なぜならギター製作の本場のスペインでは、多くの製作家たちがそのブランド名に甘んじて、平凡なギターを高価に売りつける行為に走ってしまっているからだ。だから本物の職人魂を持ち、プロの仕事をする製作家に会うために日本まで来なければならなかった。稲葉のギターには、数々の特筆するべきことがある。高温と低音のバランス感、中音の力強さ、そして弾きやすさ。完成度のかなり高いギターである。私の国フランスでは「愛したものには、計算するな。」と言われている。この言葉は、完全に稲葉氏を語っていると思う。彼は最高のギター作りのために、時間や労力をかけることを惜しまない数少ないプロの製作家だ。

ニコラ・パトリス

訳:飯塚 真紀氏